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店長日記

10月30日、今期最後のヒメオオ採集(材割り)‘15.12.20記

2015年12月20日



さて、まだまだ更新が遅れている店長日記ですが、今日はこちらも秋の恒例になったヒメオオの材割り採集。
特に今期は9月の成虫採集での結果が最悪だったために材割りでの新成虫採集に期待がかかります。
経験則から10月終わりには当地では幼虫だけでなく新成虫が採れることが分かっています。
ただ例年、羽化したての赤い個体が出てくることがあるので本来ならもう少し後の方がいいのかもしれませんが、ここ有峰の有料道路は一部が10月いっぱい、残りも11月10日くらいには全線閉鎖となります。
それにこの時期だと雪が降るのも珍しくなく一度積雪するとそのまま閉鎖となる可能性も高いため毎年10月最終金曜日には行くことにしています。
この日も天気予報では現地は時雨れることが予想されますがその程度で中止するわけにも行きません。




↑ ポイントに到着するとやはり、あられ混じりの雨が降ったり止んだりしています。
わずか2週間前まで錦秋が見事だったこの場所もすっかり落葉してナナカマドの赤い実だけが名残惜しそうになっています。




↑ 落葉したブナをモノクロで撮影してみました。
セピア調の色彩が冬を控えた物悲しさをいっそう助長して感じられます。
彩のないこの景色を訪れる者もなく現地は閉鎖を目前に最後の視察をしている管理者や工事関係者の車がわずかに走っている程度です。
自身も昔はこの時期のブナ林は寂しく恐怖に似た孤独感を感じることがありましたが、今では逆に誰も来ないことに安心感を覚え落ち着くことができます。
何て言うか、シーズン中は自分は多くの観光客や来訪者の一人に過ぎませんが、この日は自分独りだけで山や森と一対一で会話を交わしているかのような空気があります。

合羽を着て目的の木へと向かいます。




↑ 目的のヒメオオの発生木であるブナの立ち枯れ。
上部は折れて倒れています。折れてから10年前後は経過していると思われるので立ち枯れとしてはもっと古いことになります。
この辺りには同様の立ち枯れや倒木が複数あります。
以前は別の株で材割りをしていたのですが経年劣化と材内部が食痕だらけで生息木としての寿命を迎えてほとんど採集できなくなったために昨年から新たにこちらの木で採集しています。
何回も言っているようにヒメオオは生息が非常に局所的で採集圧の影響も受けやすく、現にこのポイントでもルッキングによる成虫採集はほぼ壊滅状態ですので材割りも当然自身なりに制限して複数ある発生木の一本にしか手を付けないようにしています。





↑ 割り始めると食痕が出てきました。
これだけ古い株でも中はまだ非常に堅く生に近いのですが中になればなるほど食痕が現れるような感じです。
手オノが跳ね返されるような堅い部分にも幼虫は穿孔しています。
下手に力まかせに手オノを叩き付けると幼虫もろとも木っ端微塵にする恐れがあるので食痕を見つけてから幼虫を取り出すまでにはかなり時間を労しますし場合によってはその幼虫をあきらめることも多々あります。




↑ 割っていくと食痕の先に空洞が現れました。
蛹室です。奥には新成虫がいるでしょう。




↑ 蛹室から引っ張り出したヒメオオのオスの新成虫。
この日、この材で♂の新成虫は3頭割り出しましたが全てサイズは37mmでした。
幼虫で採集して飼育すると50mmオーバーも出るのですがWILD成虫ではほとんど大型のものは採れません。
やはり過酷な環境なのでしょうか?
ちなみにこの材から採集できる幼虫も成虫も今までの結果は全てヒメオオでアカアシは一頭もいません。
もちろんアカアシも生息はしていますが発生木が違うのでしょうね。
それなのに、と言うかそのせいで生息木内で同種の生存競争で大きな個体が出ないのかもしれません。




↑ 成虫と同様に幼虫も見つかります。
画像でも分かるようにやや乾燥して生部に近い非常に堅い白っぽい辺材部に好んでいるようです。
柔らかい部位や水分が多い表面に近い部位には食痕だけで幼虫自身はそのような場所にはいません。
吹きだまりでは5m超に及ぶような積雪と氷点下20℃近い極寒から生き抜くために備えた本能なのかもしれません。




↑ 羽化間近のメスの蛹が出てきました。
戻すわけにも行かず持ち帰りましたが残念ながら羽化できずに後日落ちてしまいました。
必要分の幼虫と新成虫数頭を採集したところでオノを振る手も疲労と衝撃で痺れや痛みが出て続行不可となり終了いたしました。
さすがにこの日は他に材探しをする気力もなかったので今期のお礼と共に山の神に拝んで有峰を後にしました。

その後、山を降りてから立山周辺で新たなナメコのポイントを開拓しようと未知の林道に入ったところで良さげな場所を見つけたのですが土砂降りになったために位置を確認して後日再度攻めることにして帰途に着きました。