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店長日記

材とキノコと紅葉と。(材&キノコ、9~10月上旬編)‘15.12.8記

2015年12月05日



毎年言っていますが秋から雪が積もるまでの間は最も多く山に入るシーズンです。
目的はタイトル以外にヒメオオ採集や材割り採集も含まれます。
その中で最も多い目的がコケ(当地でキノコのこと、以下コケと称す)、特にナメコです。
今年もそのシーズンがやってきました。
もちろん当店は天然カワラ材の専門店ですから材探しという重要な業務も兼ねています。
以前は材探しのついでにコケを採るというスタンスでしたが今では逆でコケ採りのついでに材を探すようになっています。
まあコケは朽木に発生するのでコケ探しは材探しということにもなります。
というのはこじつけでナメコが生えている材はなかなかクワガタ用には適さないのでやはり材を探すときはそういう目で見ないとなかなか見つかりません。
そういう意味では有峰は以前はコケ採りのポイントとしても外せない候補地でしたが2~3年前からにわかに採集者が増えてナメコにいたってはほとんど採れなくなってしまったので現在では専らブナ材採取やヒメオオの材割り採集が主な目的になっています。

さる9月27日はパートナーのS氏とブリーダーのB氏を同行して有峰にブナ材採取に行きました。




山の秋はまずヤマウルシの葉とナナカマドの実が赤くなるところから始まります。
早いときは9月上旬でも色づき始めます。

まずは取り置きしてある目当ての材から確認していきます。




↑ 目当ての材の近くの立ち枯れに密生したハカワラタケ。
見た目にはいい腐朽材に見えますが1m近い大径のブナ材を朽ちさせるにはまだまだ役不足です。




↑ ナラタケ(可食)。ナラタケとひと言で言ってもこれはオニナラタケ。当地で言うところのモタセ。今年は晩夏に低温多雨の傾向だったためにコケにはいい条件だったはずなのでモタセは期待していただけに見つかってひと安心。
雑キノコであまり相手にされませんが出汁は最高で鍋や味噌汁に最適です。
年によっては大発生してここ有峰でも軽トラに山盛り採って行くつわものがいたとかいないとか…。
各地で愛食されていますが食べ過ぎると中毒することもあるので調子に乗って食べないほうがいいです。
あと初心者は超猛毒のコレラタケと混同する恐れもあるのでにわか判断はやめましょう。
とりあえず、今年は大発生を期待しながら持ち帰ります。






↑ ヌメリツバタケモドキ。これも癖がなく可食ですが持ち運び中に壊れやすいのでこのときはスルーしました。




↑ この時期にはおなじみのツキヨタケ(毒)。
もちろん採りませんがこのコケが少ないとこの後に出てくる他のコケも少ない傾向があるので嫌ってばかりはいられません。




↑ こちらは目当てのブナ材の折れ口に発生したエゾハリタケ。
当初は20cmを超える傘の大きさからアセハリタケかと思いましたが株の大きさや全体の形状の文献から前者と判別しました。どちらにしても可食ですがこれらブナハリタケの類は調理に幅がなく嫁に好まれないし、状態も老菌に近いためスルー。




↑ カットして見るとかなり水分は多いもののかなり柔らかく朽ちておりうまく乾燥させれば色虫用の産卵材に良さそうです。
ブナハリタケも共生しているせいか独特の甘い香りがします。
チェーンソーで使えそうな部位のみカットして崩れないように持ち帰ります。




↑ ブナと言えばやはりブナハリタケ。
ここ2年ほどあまり見なかったのでこういう群生が見られるということは今年の豊作を物語っています。

さて、肝心のブナ材ですが目当ての倒木は昨年、部分的にカットして以来でしたが腐朽の程度は思ったほど進んでいなくて期待していたほど採取できなかったので、発見してから密かに5年ほど寝かしてある取り置き材に案内しました。
車から沢沿いの斜面を100m以上入らないといけないので一人では運ぶにも限界があるので3人の今日なら何とかなるでしょう。
材はまだ裁断していないのでどんな状態か分かりませんが樹皮に着生しているツリガネタケと見つけてからの年月を考えたらそこそこ使えるはずです。




↑ チェーンソーで80cmほどの径の樹幹を裁断してみると、中心部にやや生部がありますが他は一様に朽ちておりオオクワ系の産卵材にはベストでしょう。
断面に見える茶色の線は拮抗線ではなくコルク質です。
なぜ朽ちた内部にコルク質があるのかは不明ですがツリガネタケによって朽ちた材に見られることから、線状に菌糸が子実体化したものかもしれません。




↑ 上部が根っこになりますがまだ10m以上ありますのでしばらくは在庫に困ることはなさそうです。
ただ、カットしても運ぶのが大変でこの日も3人がかりで2カット半を持ち帰るのが精一杯でした。
深山に入ると極めて良好なブナの朽木に出会うことがありますが持って帰れなければ絵に書いた餅です。
だからこそブナの森は奥深く魅力的なのです。


さて、ブナ林もいいですが今年もそろそろナメコのシーズンです。
数年前まではナメコもまずは有峰からスタートしていたのですが標高が有峰の半分ほどのミズナラの雑木林でもほぼ同時に発生が始まることが分かってからはあえて競争率の高い有峰を避けて中山間地の雑木林から探すことにしています。
例年、9月終わりから10月始めにかけて早生のナメコが発生しているので今年もヒメオオが不漁で早々にあきらめかけた10月2日に南砺市のいつものポイントへ。




↑ 10月とはいえまだまだ緑に覆われ夏の装いを残す雑木林。
発生木となる立ち枯れも樹皮がほとんど剥がれて丸裸状態に。
そろそろナメコの発生木としても寿命を迎える頃です。
もうピーク時のような豊作は見込めないでしょうが、少しでも出ていることを期待して入ります。

毎年この頃には気の早いナメコ狙いの連中(自分もそうですが)が来ているか下手をすると山中や林道でバッティングするのですが今年はヤブに覆われた林道の様子から車が入るのは自身が最初のようです。
伸びきった小枝や固い茎等で可哀相なくらい車の側面は傷だらけになります。
車を大事にする人は絶対に来れません。
自身も車は大事にしていますがそういう用途のための車種(デリカ)ですからそのような乗り方をしてナンボだと思っています。

一番乗りだという安心感ともしかしたら全く出ていないのではという不安の中、車を降りて山中に突入していきます。
すると林道から見える位置にある昨年もナメコが発生していた木の根元に何かが見えます。




↑ 色からしてモタセ(ナラタケ)かその老菌か?と思いよく見ると、




!!!
これは?
マイタケじゃあ~りませんか!?
以前見つけているトンビマイタケとは傘の形状も違うし匂いもマイタケです。
なんてこった…初マイタケ!
うれしいですが食べるには遅すぎる老菌であることが悲しいです…。
あまりにも惜しくて何度も手にとって確認しますが鮮度は戻ってくれません。
一応判別するために一株だけサンプルに持ち帰ります。
残りは剥ぎ取って離れたところにブン投げます。
八つ当たりではなく老菌をそのまま残すと翌年発生しないと言われています。
しかし今までマイタケを見たことも聞いたこともないこのポイントのかなり朽ち果てたこの立ち枯れに来年も発生を期待するのはたぶん厳しいでしょう。
ただマイタケがこのポイントでも幻ではないということが確認できたのは大きな成果でした。

さて、思いがけない発見に動揺しつつも目的のナメコを目指して深いヤブに分け入ると、





↑ 早速幼菌を発見。予想通り早生の一次発生のナメコです。
ちょっと小さいですがこの時期のナメコは躊躇しているとすぐに生長したり幼菌のまま萎びたりするので採ってしまいます。




↑ ナメコの幼菌とモタセ。
総称でモタセ(ナラタケ)と言っていますが正確にはこちらは傘裏にツバがないナラタケモドキ(可食)です。
モタセが黒く朽ち果てた後に入れ替わるようにナメコが同じ木で発生するのでナメコの発生の目安になるのですが、そういえば先日の有峰でもモタセはあったものの大発生というほどでもなかったし、ここでもナメコの方が先行している感じなのでやはりモタセは予想に反して不作なのでしょうか?




↑ 今期最初の採集でいきなりの群生発見。
この時期にこれだけの群生に出会えるとは今期は期待できるかもしれません。




↑ 残念ながらすでに老菌。
おそらくこれがこのポイントで今期最初に発生した群生でしょう。
この気温下では2~3日ずれただけで老菌になってしまうのでさすがに毎日通わない限り初物にドンピシャのタイミングで来ることは不可能です。
それでも例年なら最初の採集では一食分程度の収穫しかありませんが、この日は2kgほどの獲れ高があったのでベストのタイミングでしょう。




↑ こちらは山中で見つけたアナタケが着生したミズナラの朽木。
腐朽が進んで折れた立ち枯れの寝際に発生しているのをよく見かけ、これが付いている付近はかなりフカフカに柔らかく色虫の産卵材に最適です。
ただし太い幹では内部に堅い部位もあり良い部位だけをカットする必要があり手ノコでの作業は汗だくになるし持てる量にも限界があるので貴重な材になります。




↑ こちらも秋の優秀な食用菌であるクリタケ。
癖がなくスキヤキなんかにも最適なのですがすぐに虫に食われてしまうので綺麗なものを持って帰らないと嫁に嫌がられます。

この日はシーズン最初の採集にしては色々な収穫があり有意義でした。
それに気を良くして3日後の10月5日、定休日ではないためバイト終了後に徹夜で午前中だけ先日と同一のポイントに再訪します。
林道の駐車スペースに車を止めて準備をしていると隣に軽四が止まってオッチャンが出てきました。
自身が車を降りて後ろのハッチバックを開けて準備をしていると話しかけてきました。
(会話文につき富山弁にて失礼します。)
「コケけ?」
「そいが、あんたもけ?」
「だいたいこの時期にナメコが出だすから見に来るがいちゃ。」と、オッチャン。
さらに、自身のトランクのチェーンソーを見て、
「木を切ってナメコ採るちゃ、気合入っとるな。」と勘違いしているので、
「なーん、これはコケ採るがじゃなて仕事で材を裁断するがに使うが。」
自身の虫屋の仕事を説明すると長くなるので省いて説明しました。
「ナメコ出とるけ?」
と聞いてきたので、
「こないだ来たときはちょっこ採れたちゃ。けどもうちょっこすりゃまっで無くなっちゃ。」
と自分。
「なんでけ?」
と言われたので
「ここもだいぶ知られたからわやくに人が来て根こそぎ採られっちゃ。」
と答えると、
「なーん、山も広いからいくら人が来たって又出てくるからどんだけかは採れるもんやちゃ。」
とのんきに答えています。
こんな気の長い人間ばかりならいいのですが富山県民は近隣の県からは山菜でも根こそぎ採っていくと評判が悪く嫌われています。
実際ナメコでも幼菌だから数日待ってから採ろうと手を付けずにいても小さいまま誰かに持っていかれます。
そんな状況ではいい状態のナメコなんて採れる訳無いので自身は他の採集者が来出したらこのポイントは捨てます。
よってこのオッチャンと会ったということはここもこの日でたぶん終わりだと思いながら入山します。




↑ まだまだ落葉には程遠い林床は背丈より高い低木や下草で見通しが利かない上に歩くのすら難儀です。
なんとか頭上の樹上部を目安に立ち枯れの位置を確認して一本ずつ見ていくと、




まずはモタセの大きな株を発見。




↑ こちらも。




↑ こっちは大群生。




↑ またしてもモタセ。
これだけあると採る気もなくなってきます。
保存するのも手間がかかるので食べきれる分だけ採取します。
先日のナメコが幻だったようにどれもモタセばかり。
モタセが大発生するという予想はやはり当たったようですがナメコが全く見つからないので早々にこのポイントは見切って近くの他のポイントを見に行くことに。




↑ こちらは林道から離れて尾根線まで登ったポイントなのでこの時期ほとんど入山者はいません。
おかげで遊歩道も下草が繁茂し放題です。
時間が無いので周辺を軽く見ただけですがやはりここもモタセばかりでナメコは見当たらず。




↑ 結局この日はナメコはゼロで収穫はこのカワラ材のみでしたが、この材ももう少し腐朽させるのに放置してきました。


さらに4日後の10月9日、この日は定休日のため一日かけて山に行けますが先日の様子からナメコはまだ期待できないでしょう。
とりあえず南砺市の別のポイントを見に行きます。
ここは2年続けて大量に採れましたが昨年他の採集者に知られてしまったので発生していても短期の勝負でしょう。




↑ きつい斜面をヤブと格闘しながら見て回るも見つかったのはやはりモタセ(オニナラタケ)。




↑ こちらもモタセ(ナラタケ)。
せっかくだからコンビニ袋一杯に採りましたがそれ以上は無用です。
モタセがまさにピークですのでやはりナメコには時期尚早です。
時間の無駄なので早々に山を降りヒメオオのポイントに向かいます。
ヒメオオは今期はあきらめたので期待はしていませんが、その先のブナ林へ久しぶりに材探しに行く予定なので立ち寄ってみます。




↑ 旬を過ぎたヒメオオポイントは何気に寂しい雰囲気でしたがそんな中でもギリギリまで♀を探すやもめの♂に愛しさを感じます。

そのままスルーして林道の行き止まりまで向かいますが新たな材やコケも見当たりません。
ただ普段は通行止めの林道が通行できたのでそのまま岐阜県を周って先日紹介した風景の写真を撮りつつ帰りました。
翌10日は祝日ですが臨時休業して息子と牛岳にキャンプに。




↑ ここでは今年2回目のキャンプです。
自宅から近く、思い立ったらすぐにこれる距離なので便利です。
天然温泉施設も近いため重宝します。






↑ 先日採ってきたモタセを持参してきてキノコ汁を作りました。
息子は口をつけないので一人で食べましたがザルの半分を食べただけで満腹です。
モタセは食べ過ぎるとお腹を壊すので食べすぎには注意しましょう。

このキャンプ場もあと数日で今シーズンの営業が終了です。
次は12月にスキー場がオープンしたときにスノボをしに訪れることになるでしょう。