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店長日記

ヒメオオとの駆け引き

2013年09月22日





↑ 9/20、岐阜県某所のポイントにて。秋晴れの空が気持ち良い。

前回書いたように8月下旬から9月上旬まで続いた雨天から開放され最近はやっと秋晴れが続くようになってきました。
気温こそまだ真夏日になることがありますが空気はカラッとした秋の空気で空も高く気持ちが落ち着きます。
ただ、先日は台風18号の影響で各地に被害が発生し当地ではたいしたことないと思っていたのですが県南部を中心にかなりの総雨量があったらしく八尾では橋脚が基礎から削り取られ損壊しトンネルで土砂崩れが発生し通行止めになりました。
世間はちょうど3連休で自身も盆の代休で臨時休業し関東に帰省中だった為、もろに影響を受け15日はディズニーランドに行くはずが折からの大雨で予定変更しました。





↑ 9/20、ヒメオオ採集に行った帰り通った時の八尾ダムの様子。
台風通過から5日たった今でも水量は多く水は完全に濁りまるで泥の海の様相を呈しており流木やゴミも多く漂流しています。
今までも大雨時、部分的や一時的に濁ることはありましたが今回は今までとはレベルが違いました。H16年の台風23号のような大きな被害がなかったのが幸いです。
あの時は神通川水系が未曾有の洪水となり特に上流部ではJR高山線があちこちで寸断され最悪廃線の危機になるくらいの大被害となりました。
今回の台風でも近畿を中心にかなりの水害がありましたが被災された地域にはお見舞い申し上げます。

さて、個人的なことですが上記の帰省で日を変更して無事ディズニーランドに子供を連れて行くことは出来たのですが混雑でおなじみのハロウィーン期間中ということもあり平日でも移動もままならないほどの混雑振りで疲労困ぱいとなり日程的に強行軍だったせいもあり運転手を務めなければいけないお父さんである自身は疲労から途中で発熱し、その後40℃近くまで上がったのを最高に22日現在、ずっと上がり下がりを繰り返しながらも微熱が続いています。
歳のせいもあるかもしれませんが、子供が出来てからはあきらかに風邪をひく頻度が増えています。昔は年に1回軽い風邪をひくかひかないかくらいでしたが、最近では年4~5回は熱を出している気がします。
まあ、子供の身代わりになっていると思えば辛抱できますがそれにしても今回のはしつこいです。久しぶりに意識が朦朧となる状態を味わいました。

ちょっと余談になりますが、皆さんは周りに風邪をひいている人間がいるとき、そのことを知らなくても風邪をひいている人間がいることが分かりますか?もちろんその人の症状とかを見ずにです。
変な質問だと思われますが、自身は風邪を患っている独特の匂いで判別することが出来ます。子供や嫁も風邪をひくとその匂いでわかります(自分の場合はわかりません)。
自身の後輩や嫁は近くに風邪を引いている人間がいると後頭部から首にかけてや肩が痛くなったり重くなったりして分かるといいます。
このような感覚は多くの人が持ち合わせていると思うのですがどうなんですかね?
よく昔から「悪い気に当たる」と言いますがこれもそうなのかもしれません。
そう考えると「病は気から」というのもまんざら嘘ではないと言えるでしょう。

気合が足りないのか長引く発熱の体調の中、20日(金)だけは気合が入ったのか朝から熱も下がっていたので満を持して岐阜のポイントへ。
天気も申し分ないので過度に負担がかからないように体力を温存しながらポイントを見て回ります。
ところが、歩き始めて例年ならいるはずの木を数本見ても気配がありません。
おかしいな?富山の利賀ではほぼピークになっている状況ですので例年なら数日遅れで多くの発生が見られるはずです。
数に変動はあっても全くいないことは過去ありません。
まあ、もう少し標高の高いところならいるだろう、と山を上がっていきます。
それでもヒメオオは確認できません。
代わりにいつもならこの辺では少ないアカアシがやたらいます。



↑ 発生木のすぐ近くのヤナギでヒメオオかと思ったらアカアシでした…。

このヤナギは林道から斜面を少し下りた所にあり当然周りの状況から先客が来た形跡はありません。発生木のすぐ近くということでシーズンで今まで外したことはありません。
今回初めて空振りとなりました。
この時にだいぶ不穏な空気を感じていました。





↑の2枚は林道上の水たまりです。
もちろん水たまりにヒメオオがいるわけではありません。
水たまりの濁り具合やワダチの跡を見ているのです。
他の採集者や森林管理者が車両でここを通れば水は濁り水中にワダチが残ります。残ったワダチは水の流れや新たなワダチができない限り残っています。
そしてこの水たまりはここ一両日中は降水が無かったため少なくとも2日以上前(おそらく台風18号の通過時)にできたものです。
そう考えると最低でも昨日、今日は誰も車では入っていないでしょう。

採集と言うのは虫がいる木をどれだけ探すかということばかりではありません。
五感をフルに使って探すというのはこういう技術も不可欠なのです。
誰も先行者がいない(少なくともここ2日間は入っていない)のならば、それで見つからないということはヒメオオが発生していない(発生はしているがここで活動していない)か、自身の目が節穴であるかのどちらかです。
自賛するつもりはありませんが利賀では問題なく見つかっている以上、自身の能力のせいではなく本当に個体がいないのでしょう。

販売個体はほぼ確保できているので今回は採集だけが目的ではないので採れなくてもいいのですが、採れて持ち帰らないのと全く見つからないのでは精神的な満足感が全く異なります。
フラストレーションが溜まる中、気持ちが焦り始めました…。



↑ 採集者が以前入った跡。

車だけではなく採集者は徒歩でも来訪します。ワダチはなくとも道路横の笹ヤブにはヤナギに向かって進入した形跡がはっきりと残っています。
ただ、笹の倒れ具合から見てせいぜい一人二人が確認しに見に入ったくらいで採集したような感じはありません。



↑ こちらは綺麗に笹が倒れているので繰り返し入ったのでしょう。踏まれた下草が茶色に枯れていることからかなり以前から入っているのでしょう。ただ、ここもヤナギの手前だけでありこの木で採集したような形跡がありません。
もちろん、この日もいませんでしたし、かじり痕もほとんど確認できません。
これは先行者もかなり苦労しただろうな…と思いつつ足を進めると、たまたま休憩して水分を補給しようとしゃがんだ時に通常なら完全にスルーする下草に隠れた背の低いヤナギに1ペアのヒメオオを見つけました。



↑ 標高は1170mと高くもなく低くもなく…。時間も問題ないし…。

利賀でもそうですが例年のポイントで見つからないときは得てしていつもはスルーする木で結構見付かったりするもんですね。
自身はこれは偶然ではなく先ほども書きましたが発生はしているが何らかの理由があっていつもとは違うポイントで活動していると考えています。
いくら虫に予知能力があったとしても羽化時期を自分の意思で変更することは不可能なのですから天気が悪くても新成虫は必ず本能的に活動しなければいけないのです。
では、何らかの理由というのは何でしょうか?



↑ これを見て下さい。林道横の清水で極めて透明な水はそのまま飲むことも出来ます。
写真なので高低感が分かりにくいと思いますが林道から水面まで5~6mの高さがあります。
池の周りの下草が白っぽく変色しているのが分かるでしょう?
おそらく先月の豪雨時に洪水でこの高さまで濁流が溜まったのです。
通常なら林道の下の配管を通って反対側の谷側へ排水されるのですが流量の限界を超えたため天然のダムとなって深さ3~4mくらいまで水が溜まったのです。
下手をしたら林道ごと谷に押し流されるところでした。
実際、今季は例年になく森林管理者の重機が何日も入り林道を補修した箇所が幾つもありました。
ヒメオオはその危険を察知して土砂崩れがおきそうな斜面のヤナギを回避している可能性があるのではないかと推測しています。
これは過去に利賀の林道でも同様の事例を観察しています。
生息標高を厳密に厳守している本種ですからそれくらいのリスク回避能力を持っているのかもしれません。

能書きはともかく結局この1ペアを採ったところでこれ以上ここでの採集はあきらめました。
そして気分を切り替えて再度利賀のポイントへ向かうことにしました。
途中、行けたはずの林道が通行不可でものすごい大回りをしなければいけないという紆余曲折があったものの何とか辿り着きました。
ただ、時計を見ると採集に許される時間は30分だけです。
そこまでして利賀に行ったのはもしかしたらさっきの岐阜のポイントは発生が終わったのか(それはないと思うのですが)を確認したかったからです。
岐阜で終わっているなら利賀でもそれに先行して終わっている可能性が高いからです。

早速足早に流しながら見て行きますが、やはり利賀でも毎年外さないポイントで今季はほとんど見つかりません。
やはり終わったのか?と思いながら別のポイントに行くと、



いました!
ピントが合っていませんが大型(40mm超)の♀です。
これだけの♀が単独で樹液を吸っているということはまだ活動は終わっていません。



↑ ♂も大型の個体がいました!残念ながらフセツが1本欠けていましたが今期最大の55.0mmでした(予約済み)。自身3年ぶりの55mmオーバーです。

ざっと見た感じ個体数は少ないですが大型の♀が多く発生が終わっている観はありません。大型の個体をいくつか採集し終了。ただ、ここもポイントによってバラつきがあり、また例年ならヒメオオしか見つからない木でアカアシが複数見つかったりしました。
気候の変動はアカアシの行動にも影響を与えている可能性があります。
とりあえず発生のシーズンが終わっていないことが分かったので一安心です。
あと、1~2回岐阜を訪れて生体の動向を確認できれば満足です。
あわよくば55.0mm以上の♂が見つかることを期待したいですがさすがにこの時期ではそれは難しいでしょうね。




↑ 岐阜のポイントで今年初めて確認できたブナハリタケ?の幼菌。
距離があってよく見えませんでしたが他の木でもツキヨタケが観察できキノコのシーズン到来を予期させる景色です。

結局この翌日再び風邪をぶり返しました…。