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店長日記

猛暑~大雨

2013年09月12日





9月9日、8月下旬の大雨以降ずっとぐずついた天気が続いていましたが久しぶりに青空が広がったブナの森。

イライラします。
ヤキモキします。
空を見てはため息が出ます…。
あの連日の晴天と猛暑をもたらした夏はどこに行ったのでしょう?
前回の日記でも書きましたが8月23日の豪雨とともに季節が急変して気温は下がり雨の降る日々が続いています。
この時期にこんな天候が続くと稲刈りをひかえた農家とヒメオオの採集者は気が気ではありません。
どちらも適した期間が短くタイミングが重要なのです。
当地はローカルなので周りで「稲刈りどうしよう?」という声をよく聞きます。
間違っても「ヒメオオどうしよう?」という世間話は聞きません。
しかし自身にとっては稲刈り以上に重要なことなのです。
それ以上にヒメオオ自身が困惑していることでしょう。
生死がかかっているので天気が悪いからといって繁殖活動を後回しにするわけにはいかないのです。
過去の観察からも雨天でも少なからず活動はしていますが、採集効率が悪いだけでなく最悪こちらの命の危険に関わることもあります。
先月23日の豪雨時も早朝の段階で山には降雨域がかかっていなかったため嫁の制止を無視して行こうとしたのですが、自宅周辺のあまりに激しい降り方に外に出るのをためらって行かなかったのですが、その後の訪問で当日の昼には山間部も激しい豪雨となり林道のあちこちで出水して土砂に埋まり通行不可となったことがわかったので、強行していたら山から帰って来れなかっただけでなく最悪、車ごと転落ということも無きにしも非ずという状況でした。

何故そんなに焦っているかというとヒメオオの採集はもちろん、もう一つ理由があります。
それは昨年の日記で書きましたが、利賀のポイントにあるブナの立ち枯れの根元で老菌になって腐りかけたトンビマイタケの巨大な株を数株見つけたからです。総量では20kg超になると思われます。
その時は完全にタイミングが遅かったため採取できませんでしたが今年はその雪辱を果たすべく時期を伺っていたのです。
トンビマイタケはマイタケほどの高級キノコではないもののそれに勝るくらいの希少種で東北の一部では珍重されています。
それに他のキノコは秋以降が旬なのに対し、トンビマイタケは盛夏から初秋が旬なのです。
あまり早まって採れないのも嫌なのでヒメオオの発生時期に併せて採取しようと考えていたのです。
さらにこのキノコは猛暑で雨が少ないほうが発生しやすいとも聞いていたので今年は条件に合致しているという期待があっただけに雨続きで腐っていないか心配で仕方ありませんでした。
それだけに前回の日記でも26日に採集に行って林道が通行止めだった時にはがく然としました。
ヒメオオは予備のポイントがいくつかあるのでそこがダメでも他に逃げ道はありますが、キノコはそこだけにしかありませんし、ましてやそのポイントは林道の最奥地で他の迂回路は皆無です。せめて近くまででも行ければ徒歩で向かうのですがあまりにもガンダーラの地は遠かったです…。
無念のうちに引き返し、トンビマイタケは半ばあきらめてヒメオオのポイントの再考をしました。もし近隣のポイントも大雨の影響がある場合は最悪新規のポイントにかけるしかありません。外せば間違いなく今期の採集数に影響が出ます。

そんな不安の中、大雨から1週間後の8月30日、再び山へ行くつもりが早朝の段階で能登半島に強雨域がかかり記録的な大雨になっていることがレーダーから確認できました。思案のしどころですが、広範囲を対象とした天気予報よりも局所的には自身の経験則と知識から予報した、昼までは大丈夫という予報の方が当たると信じていざ出陣!

行程から考えるとまずヒメオオのポイントから経由することになります。
ただ、時間的な猶予からじっくり採集している場合ではありません。
下手をすると天候不順からまだ発生していないことも考えられます。
見慣れたポイントに着いて早速ヤナギを見て回るも不安が的中し、いつもいるはずの木に姿が見えないどころかカジリ痕も確認できません。
ここでいないとなるとほぼ期待できません。
「やっぱり早かったか…?」
とあきらめ気分でそれでも良く探すと、



いました!
1年ぶりの再会です。
発生初期の割りには擦れておらず綺麗な新成虫です。それにサイズもそこそこです。
例年なら最初は越冬したボロ♀が見つかるのですがやはり最近の天候の影響があるのかもしれません。
その後、時間の関係で軽く流す程度に探したところそれでも4ペアほど採取できました。
なかでも1頭の♂が大型で帰宅後の計測では54.2mmあり当たり年を期待させるようなサイズでした。
本来ならしつこく探すところですがこの日はトンビマイタケの確認があるので気分的に落ち着かないので先を急ぎます。
時折にわか雨が降る中、通行止めの不安を抱えながらも強烈なブッシュに被われた林道を進んでいくと(この時点で車の塗装は擦り傷だらけになります)なんとか最奥部のポイントへと到着しました。



↑ 気温は下がったといってもまだまだ夏の装いのうっそうとしたブナの林床。

早速徒歩でトンビマイタケのポイントを目指しますが本来あるはずの尾根上の歩道は下草でほとんどどこにあるのかわかりません。
勘を頼りに進んでいくとヤブの向こうに見覚えのあるブナの立ち枯れが、
「たしかあの木のはずだ。」と近づくと、



↑ どちらも同じ立ち枯れの画像です。
なんか記憶と異なる感じがするのと、トンビマイタケのかけらも確認できません。



↑ 昨年見つけたときのトンビマイタケの老菌。

よく思い出すとキノコが生えていた根部に昨年はなかった倒木が!
近くの別の立ち枯れがよりによってキノコのあった場所に倒れて直撃しています。
これでは生えていたとしても木っ端微塵でしょう…。
自身の期待も木っ端微塵に…。
来年に期待しましょう。

夢破れて山河あり…、
仕方ないので切り替えてヒメオオの材割りをすることに。
ここはヤナギもなく成虫は見つからないものの幼虫は採集できる不思議なポイントです。



↑ 割り始めてほどなく現れたヒメオオの食痕。
アカアシとの違いは食痕の色と食べている部位で判別できます。
アカアシの食痕は色が濃くオレンジがかっておりヒメオオほど堅い部位には入りません。



↑ 食痕の先から出てきたヒメオオの3齢幼虫。



↑ ほぼ生に近いようなカチカチの材に入っているのがわかるでしょうか?



↑ 断面から確認できるヒメオオの幼虫。「昆虫フィールド」の寄稿でも書きましたがヒメオオは自然下ではほぼ間違いなく画像のように拮抗線が混入している見た目には優れない堅い材に産卵します。今回材割りしたこの材の続きの部分をヒメオオの産卵材として限定で販売します(生体保護を考慮した上で生息木の採取には十分注意を払っています)。



↑ 近くの大径のブナの倒木の柔らかい部位から出てきたオニクワガタの♂個体。

さて日を改め9月4日、定休日でもない通常の平日ですがバイトが終わった早朝、久しぶりに一部に青空が出ていました。
この機会を逃すわけにはいかないと帰宅後そのまま山へと出発です。



↑ 久しぶりの晴れ間を楽しむように舞うミヤマカラスアゲハ。何回見ても美しいです。

しかし山を上がるにつれて雲が低く垂れ込めてきてポイントに着くと小雨混じりの曇り空に逆戻り。
それだけでなくこの日は折からの台風崩れの低気圧の接近で東海地方で豪雨となり雨域が北上している状況でポイント付近は嵐を思わせる強風に。



↑ 雲の動きも早く嵐を予感させる薄暗い空。

これだけ風が強いと雨よりもヒメオオの活動に悪影響があります。
ヒメオオが付いている細いヤナギは右に左に大きく揺れてつかまっているどころではありません。
案の定、いつもいるはずの生息木にはほぼいません。
ボウズで帰るわけにもいかないので普段はスルーする採取したことのないヤナギを見て回ると不思議なことに複数の個体が見つかりました。



↑ 揺れるヤナギの枝に必死でしがみ付くヒメオオの♀。



↑ どうしようか躊躇しているかのようにヤナギとは関係ない雑木で呆然としている♀。

さらに不思議なことにこの日は強風のせいで♀の場所を♂が確認できないのか、そのような場所では♀単独でいることが多く見られた。



↑ 比較的風の弱い場所ではペアの姿も。

途中で雨も本格的に降ってきたので早々に撤収すると、午後からは市内で時間雨量50mmに達する大雨となり店の前の幹線道路や向かいの店舗では浸水するありさまとなりました。一時的には店も停電となり焦りました。
つくづく不順な天気です…。

懲りずに2日後の9月6日もイマイチの天気の中、友人のM氏とヒメオオ採集に。
この日は新規ポイントの開拓予定です。



↑ まずはいつものポイントへ。ガスがかかる中、なんとか1ペア(中央やや右側の枝)を発見。



↑ 上のペアを近くで見るとペアの下に極小の♀がもう1頭いました。面白い構図です。
♂もあまり大型には見えませんが採ってみると真ん中の♀が異常に大きかったです。
帰って測定すると40mmを超えていました。
そういえば一昨日も採れたのは大型の♀ばかりでした。
この日も結果的にはメスの割合が多く大型のものが大半でした。
今期の発生の仕方の特徴でしょうか?
この後大型の♂が採れる事を期待します。



材割りしたポイントで前回はなかったはずのキノコが発生していました。
ムササビタケで可食ですがこの日はスルー。
先述のようにここは幼虫はいても成虫が見つからないのですが、この日はしつこく探しているとやや離れた深いヤブに被われた1本のヤナギで1ペアの成虫を見つけることが出来ました。これでここに成虫がいることも証明できました。

続いて全く未開のポイントへ向かう予定が林道の崩壊のため断念せざるを得なくなったため岐阜県の別の山系のポイントを開拓に向かいました。
一応採れた実績はあるのですが少数なのでもしかしたら隠れた多産地が見つかるかもと期待して徒歩でひたすら探すも全くかじり痕も気配もなし…



↑ いないとあきらめたところで辛うじて見つけた1ペア。
逆に全く見つからない方があきらめがついて良かったのですが…。
どっちにしろ再度訪れることはないでしょう。
結局この日のポイント開拓は外れとなりました。

このままでは今年の販売個体が十分確保できないのではないかと心配になり、9日に4度目の採集に。
この日は冒頭の写真のように朝から久しぶりの青空に。
まさに採集日和ですが、逆にそれが仇となって放射冷却のためにポイントについた時点では気温が13℃まで下がりヒメオオはまだ出ていませんでした。



↑ 気の早い♂が日差しを求めて木を登っていく所です。

ひと通り見たときはわずかだけでしたが再度帰りにもう一度確認してみるとそれなりに見つかってこの日は合計で7~8ペア捕獲できました。
これで今期の販売個体もほぼめどが付いたので今後は他産地の採集に移行していきます。
販売個体は徐々にUPしていきます。

※追伸
最近お問い合わせをメールで戴くのですが中にはセキュリティの関係からか返信しても戻ってきてしまい連絡が取れない方がいらっしゃいます。
お問い合わせには遅くなっても必ず返信していますので返答がない方は再度受信可能なアドレスでメールをいただくかお電話にてご連絡いただけますようお願いいたします。