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店長日記

ヒメオオが最盛期です。

2012年09月19日





↑ 9月10日、ヒメオオ採集に県境付近の岐阜県に訪れたときの空模様。
何の変哲もない秋の空に見えるかもしれませんが、そうではありません。
はけで掃いたような巻雲や層積雲、高層雲の形状から秋らしく感じられますが、県境の山の上空から風下に当たる富山側にかけてこのような雲(画像にもありますが時によっては明瞭なレンズ雲が見られることもあります)が発生しているときは南風が強く吹いているときで富山ではフェーン現象で気温が上昇します。
この日も現地では23~25℃くらいでしたが同時刻に富山市では34.8℃の最高気温を記録しました。この前日も富山市では35.3℃の猛暑日を記録しています。
またこの1週間後の17日には台風16号に向かって南風が吹き込み最高気温は36.8℃、自身の自宅から2kmくらいの秋ヶ島では37.5℃と9月としては史上最高気温を記録しました。
もはや残暑のレベルではありません。しかし厳しい夏もこの台風とともに秋の空気に入れ替わったようで急に過ごしやすくなりました。
日も短くなり夏ももう終わりですね…。



↑ 川ではありません。通常なら水が貯まっている八尾のダムの底ですが水量が減って清流になっています。
当地では水不足とは無縁ですが関東の方は取水制限が入りましたね。今後、地球規模で気候が変動すれば首都圏はもっと酷い渇水に襲われるかもしれませんね。
市販のミネラルウォーターだけではしのげない事態も想定した方がいいでしょう。


さて季節はヒメオオの旬を迎えています。
自身も例年通り時間の許す限りポイントへ行っています。と言ってもある程度の個体数はすでに確保できているので今は新規ポイントの開拓と大型の♂個体の採集が主です。
9月7日は店の営業がありますが午前中だけ県内のポイントの様子見に行きました。


やはり他の採集者も訪れているせいか数は少なめで、そこそこのサイズの個体を2ペアだけ採集しました。
この日は採集に力を入れていたわけではないのでポイントをあとにして普段は行かないさらに奥の別の山に行きました。
そこは以前にも2回ほど訪れていてヒメオオは採れなかったものの3年ほど前に行った時に見つけたブナの倒木をヒメオオの産卵材用に裁断するつもりでした。
着いて目的の材を見つけると一部が採集者によって最近材割りされた痕があります。
ここまで採集に来ているとはヒメオオの採集者はあなどれないですね。
ただ何も採れなかったのか少し割っただけであきらめたようです。
自身も以前に付近を材割りしてオニクワ、スジクワ、アカアシの幼虫は採りましたがヒメオオは採れませんでした。
まあ、ここはヒメオオは採れないだろうと思っていたので材割りされた痕のある倒木の一部を裁断してみると断面に食痕があります。


↑ すんでのところで切断するところでしたがギリギリセーフでした。右はアップの画像ですがほとんど心材部であるカチカチに堅い部位に食い込んでいます。
おや?と思いながら引っ張り出して見るとどうもヒメオオの幼虫のようです。
他にも食痕があるので割って見ると、


いずれも堅い部位から数頭見つかりました。堅くて割り出し時に一部潰してしまいましたが4頭無事に確保しました。
これだけ堅い部位にいたのと食痕の様子や幼虫の大きさからヒメオオだと思いますが、もしそうならここもポイントということになります。それなら以前は採れなかったものの周辺を探せば成虫が見つかるかもと思いましたがこの日は時間がないため止めました。
さらに、近くにあった同一の倒木の一部である柔らかい部分を割って見るとこちらも多くの食痕と幼虫が現れました。


こちらは食痕の色や材の状態から見てほとんどがアカアシの幼虫のようですので材割りは終了しました。
本来ならヒメオオの幼虫が生息している材は保護のために持ち帰らないのですが、いないと思って裁断した部分にたまたま幼虫がいたので切りとった部分だけはいただきました。ヒメオオかどうか確定ではありませんが飼育して見ます。

続いて10日は定休日なので1日かけて岐阜県の新規ポイントの開拓へ出かけました。
一応2ヶ所候補を絞ったのですが、例のごとく車両の通行が不可だと徒歩になる可能性があるので場合によってはどちらか回れればOKかな、という気持ちです。
とりあえず最初のポイント付近に到着していざ林道へ突入!と思った瞬間いきなりチェーンで塞いであり進めなくなりました。
ここからヒメオオがいると思われるポイントまでは5kmほどあります。徒歩だと往復10km以上は歩かないといけません。おまけにこの日は昼から雨の予報になっていて途中でどしゃ降りに遭うのは勘弁願いたいので渋々あきらめました。
仕方がないのでもう一つの候補地へ。
こちらは標高1200m付近まで車で行けるのでさほど山登りはしなくてすみます。
しかし、標高が上がるにつれ雲に覆われてきてポイント付近に到着した頃には小雨が降り出して来ました。気温も17℃まで下がりました。
晴れる見込みもないのでポイントを目前にこちらも撤収です。
予想外に午前中の段階でいずれのポイントも断念という結果になりました。

仕方ないので引き返して3日にも訪れている例の徒歩ポイントと周辺の山に行くことにしました。
ここは先週も他の採集者の後を追うことになったため気が進まないのですがぜいたく言ってられません。
とりあえず歩いて向かったもののやはり思ったとおり先週来て以降さらに採集者が入っているようです。その採集者も同じことを思っているでしょうが…。
道から見える探しやすい場所はほとんど入った形跡があるのでやむを得ず、気合を入れてヤブに突入して危険ですがさらに斜面の下を目指します。


↑ この斜面を降りていきました。
さすがにここまでは来ていないようでまだ採られていないヤナギの生息木を見つけました。


半ばあきらめていたので不用意に木を揺さぶってしまい多くの個体が落下して行方不明になりました…。
この日も個体数よりも大型の個体狙いだったので多く採れなくてもいいのですが♂のサイズだけは確認したかったです。
別のヤナギがないかと付近のヤブの中を格闘していると、


ブナの立ち枯れを発見しました。おそらく先ほどのヤナギにいたヒメオオはこの朽ち木から発生したのでしょう。
ヒメオオを探すときはヤナギを探すのが一般的ですが逆に発生木を見つければその周辺にヤナギがあれば高確率で採ることができます。
ただこの立ち枯れは上からはヤブや木に隠れて見つけることができなかったので斜面を降りなかったら気づくことはなかったでしょう。
苦労してリスクを冒した甲斐がありました。
成虫が採れたのであえて立ち枯れは材割りせずに来期も多くの成虫が発生するように温存しておきます。



↑ こちらは上の立ち枯れとは離れたところで見つけた別のブナの立ち枯れ。すぐ横に生えているヤナギでヒメオオが複数見つかったのでこの木も発生木なのでしょう。

さっきの立ち枯れの周辺を見回すとその木の上部が折れて落ちたと思われる倒木が散らばっています。





一部には早くもブナハリタケの子実体が出ています。↓




↑ こちらは幼菌。
今期初物なので成菌はありがたく採取しました。ちょうど1食分くらいでした。
毎年書いていますがブナハリタケ自体はそんなに美味なキノコではありませんが抗癌作用があるとのことで近年人気があります。
キノコのシーズンの到来を告げるブナハリタケを食べるといよいよ秋だなと実感します。
一部の手頃な太さの倒木を選んで幼虫が入っていないことを確認して持てる範囲で裁断してヒメオオもしくはオオクワの産卵材用として持ち帰りました。
副産物も手に入ったのでとりあえず車に戻り別の林道に向かいます。

午前中に行った山で雨が降り始めていたのでこちらもじきに降り出すだろうと思っていたのですが不思議なことにだんだんと青空が広がり始めました。
南風が強く、上記トップで紹介したレンズ雲状の高層雲が出ているのでフェーンが発生しているのがわかります。前線が近づくと風向きが変わってくるのでまだ天気は持ちそうです。
どうもこの日はこのポイントに呼ばれたのでしょう。
そう思いながら林道を登っていくと以前は気づかなかった倒木が崖に近い道の横の斜面に引っかかっているのを発見しました。
一見かなり堅そうなので普段ならスルーするところですがこの時は気になったので車から降りて確認することに。
少し押したら滑り落ちていきそうな倒木を少しずつ引き上げながら裁断してみると、


おーっ!極上の朽ち具合です。オオクワ系にはまさに最適な産卵材になるでしょう。
今日一番の収穫をゲットできました。やはりこの山に呼ばれたんでしょう。
これ以上望むべくもなく欲を出してもろくなことがないのでこの日は山の恵みに感謝しつつ撤収しました。
途中で今季倒れたと思われる太いブナの倒木にもついつい食指を伸ばして朽ち具合を見ようと一部カットしていると、


根部近くの洞の中にヤマカガシを見つけました。初めはアオダイショウかと思いましたがわずかに斑紋と独特の色が確認できたのでヤマカガシでしょう。ヤマカガシは地域による変異が大きくこれは通常よりもかなり黒化したタイプです。
ヘビは神様の化身ですからこの材には手を付けるなということなのでしょう。
やはり欲を出したらダメですね。素直にあきらめました。



↑ 帰りに麓近くの山道で見つけた栗の木。まだ若栗で食すには早かったです。まだ秋は高山だけのようです。