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店長日記

まさか!?…そして、まさか!

2015年06月19日





↑ 自身8年ぶりの採取となる富山県産(中新川郡)の天然オオクワガタ幼虫(♀)。

すみません、まだ1ヶ月遅れの更新となっております。
さる5月8日、GWも明けて気温が高い状態が続き雨も少ないことから取り置きしてあるエノキを裁断してくるには絶好の条件だと思い定休日を利用して行って来ました。
場所は初春の3月に行って当時の日記でも紹介したポイントです。




↑ 3月当時最初に裁断した頃のエノキの倒木。




↑ この日は上記の3月時からだいぶ裁断して二股になっている部位付近の裁断となります。




3月時の状態で右側の枝部を全てカットして二股のやや太い部分をカットしたときに裁断面にかなりデカイ食痕が表れました。
それまでにカットした部位にも少数の食痕は認められたもののこの食痕は色も大きさも全く別物でした。
その辺に落ちている枯れ枝で中を探ると幼虫らしき感触があります。
裁断のときに傷つけることなく無事のようです。
食痕の大きさから
「カブトムシの幼虫かな?それにしてはカブトムシの独特の糞が見当たらないな…。」
と思いながら結構雑に中の幼虫を掘り出してみたら、




「ゲッ!!!!!オオクワだ!」
思わず声が出ました。
見た瞬間はノコギリの♂かと思ったのですが頭の大きさと卵巣が確認できたので確信を持ちました。
ノコギリの♀の幼虫でこの大きさはありえません。
自身、材割りでのオオクワの幼虫は8年ぶりになるので勘が鈍っているかと思いましたが、頭で考えるよりも直感の方が得てして正しいことも往々にしてあります。
最近ではオオクワを目的にした材割りも無駄骨に終わることが多くだいぶモチベーションが低くなっていましたが、まさかオオクワが出てくることなど想定していないエノキの採取で見つけるとは思っても見ませんでした。
ただ、今になって思えば5年ほど前にこの近くで採ったと思われるエノキを販売したところ、後日購入者から材の中から出てきた幼虫を飼育したらオオクワが出たという報告をいただいたことがあります。
その方はオオクワガタを飼育していなかったので間違いなく天然のオオクワガタだということで大切にしたいと言うことでしたが、当時はここで採った材だという確証がなく2つの候補地までは絞れたのですが、今回新たに見つかったという事実からこのポイントである可能性が高くなりました。
時期をおいての2例目ということでこのポイントがオオクワの生息地である可能性が高まったわけですが自身には複雑な部分もあります。
と言うのは富山のオオクワガタは自然林タイプで水系に依存しているという生態を持論としてきたのですが、ここは水系沿いではないのです。
まあ、事実は事実なので今後さらに調査をしていくことにしましょう。

さて、オオクワの幼虫が見つかったということは他にもいるかもしれません。
たった今カットした先の方を確認してみます。




↑ 先ほど見つけた食痕以外はそれらしいものは見当たりません。




↑ それでも試しに地面に接していた側の樹皮を少し削ってみると食痕が見つかりました。
極力材を痛めないように削っていくと、




出てきたのはノコギリの♂の3齢幼虫でした。
この日、カットした部位からはオオクワらしき食痕は結局ひとつだけしか見つかりませんでした。

念のため店に戻ってから以前持ち帰った部位も確認しましたがやはりそれらしきものは確認できませんでした。
自身が富山で初めて材割りでオオクワの幼虫を割り出したときもそうでしたが、材自体はほぼ丸々一本に近い倒木で状態も良好であるにもかかわらずオオクワは1頭しか見つかりません。
ちなみに今回の材は元々立ち枯れだったので倒れてそんなに時間も経っていなかったせいかさほど幼虫の食痕はありませんでしたが、それでも根元付近はノコギリやコクワの幼虫の食痕でボロボロになっていました。
当地のオオクワは何故こんなにストイックな産卵をするのでしょうね?




↑ 店で改めて撮影したオオクワの幼虫。
ブリードでオオクワの幼虫しか見ていない人にはピンとこないかもしれませんが、頭部、頭盾、大アゴの色や形状や大きさ、気門の形状、尻部すわりだこの形状、全体的な色や形状、自身が今まで数千頭以上のオオクワ以外の幼虫を見て培ってきた勘や知識を基にそれらの特徴を比較しても明らかにオオクワです。

この幼虫とあとから割り出したノコギリの♂と思われる幼虫は念のため店に帰宅後すみやかに菌糸ボトルに投入いたしました。
そして楽しみに毎日ながめていたのですが、オオクワの方は何日経ってもボトルの周りに姿を見せてくれません。
まあ、天然個体なので内部で居食いしているのだろうと思っていたのですが、3週間経過しても変化がありません。
まさかもう蛹化してしまったのか?と思いながら確認のために慎重に培地を削ってパンドラの箱を開けてみることに。
投入したときの穴を掘り始めてすぐに表れた得体の知れない噛み終わったガムのように固くて黒い物体…。
???…。
出してみると、なんとオオクワの幼虫のなれの果て…。
再びまさか!?の思い。
何度見ても幼虫であることに間違いはありません。
投入した当時の状態で死んでいたということは遺骸の収縮して固まっていた状況から考えても採取した時点でボーベリア菌の一種に感染していたと推測されます。
自身が環境を変えなければ発症しなかった可能性も無きにしも非ずですが、不可抗力だったとあきらめるしかありません。

まさか!で見つけたオオクワの幼虫はまさか!という結末を迎えてしまいました。
新産地を証明する生体は無くなってしまいましたが、画像だけは残せたので見るものが見ればオオクワであることは分かるでしょうし、自身の中では実績として刻まれているので次の発見に務めていこうと思います。